考察
【リゼロ考察】スバルを異世界に召喚したのは誰?カップラーメンが残した違和感
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1話のカップラーメン
第一章1話に、変な一行があります。異世界に来た直後、スバルが持ち物を数える場面です。ケータイ、財布、コンビニで買ったカップラーメン、とんこつ醤油味。スナック菓子、コーンポタージュ味。味まで、書いてあります。
笑うところに見えますよね。でもこのカップラーメン、召喚の説明として、実はいちばん厄介な物証です。体のすり替えでも、ただの転移でも、この麺は説明できません。
今日は、このカップラーメンを物証に、スバルを作った犯人を言い切ります。
作ったのはサテラ——本題は手口
前回の動画で、ここまで話しました。スバルの体は、この世界製のうつわ。中身だけが、外から来た。そして最後に、こう問いかけました。誰が、何のために、この体を予約したのか。今日は、その「誰」から答えます。
作ったのは、サテラです。
本題は、犯人当てではありません。手口です。どの工場で、誰の腕で、どう作ったのか。最後まで、一本道で証明します。
手口の入口・作り替え
ただ、手口に入る前に、ひとつ、訂正があります。前回の、予約という言葉です。予約だと、できあがったうつわが、どこかに置いてあって、スバルが来るのを待っていたように聞こえます。違うと思います。
うつわは、待っていない。
召喚のその瞬間に、作られた。ナツキスバルは、そのまま運ばれたのではありません。体も、服も、持ち物も、この世界に、作り直されて出てきた。
作り替え。今日はこの一語です。
ふたつの説を測る
先に、よくある二つの説を、カップラーメンで測ります。
ひとつめ。すり替え説。この世界の体に、スバルの魂だけ入れた、という説。魂だけなら、荷物は来ません。ジャージも、財布も、麺も、日本に置き去りのはずです。でも全部、手元にあります。
二つめ。そのまま転移説。体ごと物理的に運ばれた、という説。これなら、荷物は説明できます。でも今度は、体が説明できません。前回見たとおり、スバルの体には、この世界の装備が付いています。ゲート。マナの出入り口です。日本育ちの体に、なぜ最初から付いているのか。
荷物を取れば体が余り、体を取れば荷物が余る。両方を一度に説明できる形は、ひとつだけです。
全部いっしょに、作り直された。体は、この世界の規格で。服と持ち物は、元のままの姿で。だから体には最初からゲートがあり、手元には、とんこつ醤油味が残っている。
体に残る製造の痕
作り直された、と言うからには、体に製造の痕があるはずです。三つ、並べます。
ひとつめ。第一章、アニメだと1期。パックがスバルのゲートに触れて、「使い込んでる様子がないのに素直」(一章)。新品なのに、最初から通りがいい。
二つめ。第七章97話。ベアトリスがスバルのマナを引き受けて、「多すぎる」、と呟きます(七章97話)。取り込む量が、人の規格を超えている。
ここまでは、前回も話しました。三つめが、今日の追加です。
第九章21話に、ヘクセルという薬が出てきます。ボッコの実を原料にした、禁止薬物。地の文が、効果をこう書きます。
「その本質はゲートの活性化によるマナの過剰な生成だ」(九章21話)
思い出してください。第一章でスバルのゲートを調べた、パックの場面。あそこで食べすぎていたのが、ボッコの実です。ボッコの実は、ゲートのアクセルでした。第九章が、それを薬として明文化しています。
普通の人は、薬にしないと出ない出力。スバルの体は、実を食べただけで反応した。取り込みが強く、溜める力が大きい。タンクとして設計された体、です。
オド・ラグナの循環
では、作り直す仕組みは、この世界のどこにあるのか。あります。それも、公式の設備が。
第六章、アニメだと4期の奪還編。62話です。スバルが死者の書の中で辿り着いた場所を、仲間に説明する場面。ベアトリスが、こう言います。
「全てのマナはオドラグナに還り、そこで循環する」(六章62話)
オドラグナ。この世界の魂とマナが還る、大元です。スバルはその場所を、「魂を濾す場所」と呼びます。そして地の文が、工程を書きます。
「魂は人生という長丁場で染みついた記憶や歴史といった汚れを洗い落とし、まっさらな存在となって再び新しい人生を得る」(六章62話)
整理すると、こうです。死んだ魂を、受け取る。記憶を、洗い落とす。まっさらにして、新しい人生に送り出す。魂を受け取り、次の体で世界に出す。この世界には、その工場が最初からあります。
ここで、召喚を言い換えます。召喚とは、この循環に、死んでいない魂を、外から通すことです。循環をくぐった魂は、この世界の規格の体で、出てくる。だからスバルの体には、ゲートがある。
出現の場面と、驚かない王都
実は、出現の場面も、この読みを支えます。第一章1話。召喚の瞬間は、この一行だけです。
「視線を下げてまばたきをしたら、いつの間にか昼だった」(一章1話)
落下も、召喚陣も、ありません。まばたきの間に、場面だけが切り替わる。運ばれる過程が、描かれていない。読み込んで出力する処理なら、こうなります。
もうひとつ。周りの反応です。王都のど真ん中に、人が湧いたのに、1話では、誰ひとり、驚いていません。通行人がスバルを見る理由は、珍奇なものを見る目。つまり、見た目だけです。
私はこう考えます。循環は、この世界の全員が通ってくる、正規の入口。そこから出てきたスバルは、世界にとって、侵入者ではありません。出生と同じ手続きで、書き込まれた住人です。だから、誰も驚かない。
でも、おかしい点がひとつ。スバルは、記憶を洗われていません。日本の記憶を、全部持ったままです。本来なら必ず通る洗浄の工程が、スバルだけ、飛ばされている。
工程を飛ばせるのは、機構に手が届く者だけです。つまり、スバルの召喚には、循環をいじれる手が、入っている。
魂に手を入れる作業は、実は作中で、実演されています。第六章75話。やったのはルイ・アルネブ。暴食の大罪司教です。ルイはスバルの魂を作り替えようとして、段取りを、こう語ります。
「魂から味付けを変えてやる必要がある」(六章75話)
魂は、いじれる。味付けを変えて、仕上がりを待つ。料理のように語られる工程が、この世界には、あるんです。
ここで、前回のコメント欄から、二つの質問に答えます。
ひとつめ。「日本製の肉体はどこへいったのか」
作り替え説の答えは、こうです。いま、スバルが着ている。日本の肉体は、置き去りでも、コピー元でもなく、この体の、材料そのものです。素材ごと循環を通されて、この世界の規格で、組み直された。だから日本に、遺体は残りません。向こうのナツキスバルは、ある夜、コンビニ帰りに消えた、行方不明者です。
二つめ。「因子を溜めるためのうつわでは」という説。
方向は、私も同じです。スバルの体は、取り込みが強く、出す力が細い。溜めること自体が目的の設計に、見えます。何のために溜めるのかは、次の動画に関わります。
サテラまでの一本道
では、循環に手が届くのは、どんな存在か。手掛かりは、同じ75話の、ルイのセリフです。
「魔女因子はオドラグナの対だもん」(六章75話)
対。ついになるもの。魔女因子は、循環の大元と対をなす存在。
これ、本編の外でも裏が取れます。公式サイト掲載の、作者Q&Aです。長月先生いわく、魔女因子は、オドラグナの観測範囲外のもの。因子が入った者には、適用されるルールが、異なる。
観測の外にいるなら、オドラグナに気づかれずに、工程へ手を入れることも、できる理屈です。つまり因子を握る者は、循環の機構に、いちばん近い場所にいます。実際、因子を握るルイの暴食は、オドラグナの洗浄を代行する力だと、語られます。因子は本当に、循環に手が届く。
ただ、因子持ちなら、大罪司教たちもそうです。どうして、サテラなのか。
決め手は、第四章の魔女たちの証言です。世界の半分と六人の魔女を、飲み干した。それが、嫉妬の魔女。司教が持つのは、因子ひとつ。サテラは、魔女そのものを、六人分。規模が、違います。
もうひとつ。腕の話です。うつわを作って魂を入れる技術を、作中で実演したのは、エキドナでした。リューズの複製体。前回話したとおりです。
工法も、明かされています。素体を基礎に、マナで体を組み、魂を癒着させる。素材から体を作って、魂を入れる。スバルに起きたことと、同じ工程です。
エキドナ本人は、この工法で、四百年、失敗し続けました。他人の器に、あとから魂を入れる。その癒着が、定着しなかった。
スバルは、一発で動いています。違いは、素材。本人を素材に、その場で組めば、自分の魂が、自分の体に合わないはずがない。
そしてエキドナは、サテラが飲み干した、六人のひとりです。発注したのが、サテラ。使われた腕が、エキドナの技術。腕と、権限。作るのに要るものは、サテラの中でそろいます。
では、スバルの設計図はどこにあるのか。いりません。素材ごと通すやり方なら、設計図は、材料そのものに書いてあります。
思い出してください。前回の一行。「強欲なる呪印」
この体の先約を守る呪印に、「強欲」という字が付いています。偶然かもしれません。でも、うつわの製造に強欲の腕が使われたなら、この字は、署名です。
味まで、そのまま
ここで、循環の工程をもう一度。正規の工程は、記憶を洗うことでした。洗えば、まっさらになる。まっさらになれば、それはもう、ナツキスバルではない誰かです。
サテラは、洗いませんでした。中身は、記憶ごと、そのまま。姿も、赤ん坊からのやり直しではなく、17歳のナツキスバルの、そのまま。
そして最後に、カップラーメンに戻ります。世界の規格が必要なのは、体だけです。服も、財布も、麺も、この世界仕様にする必要はありません。なのに、味まで、そのまま再現されている。
記憶も、姿も、味も、そのまま。これは機能ではありません。こだわりです。ナツキスバルを、何ひとつ欠けさせず、そのまま連れてきたい。作り替えた側の、意志です。
まとめ・次回予告
整理します。
- 荷物は来ている。体はこの世界製
- 両立する形は、作り替えだけ
- この世界には、魂を洗って送り出す循環がある
- スバルはそこを、記憶を残したまま通された
- 工程に手を入れたのは、循環の対、因子を握るサテラ
- 腕は、取り込まれたエキドナの技術
スバルは、召喚されていません。この世界で、一度、作られています。
最後に、ひとつだけ置いていきます。降ろされた先は、紋章が盗まれた日の、王都の大通り。日本は夜なのに、王都は昼。時刻も、場所も、結果ではなく、設定に見える。誰と出会わせるための、配置なのか。
味まで写すほどの執着で、なぜサテラは、ナツキスバルを選んだのか。次は、そこです。
原作:長月達平『Re:ゼロから始める異世界生活』(小説家になろう/MF文庫J・KADOKAWA)。 本文中の原作の引用は、考察・批評を目的とした引用です。