考察
【リゼロ考察】フリューゲルの正体とは?400年前への行き方・帰り方・選ばれた理由
第九章まで読んだ・見たので、本文を開く 本文をたたむ
大樹の刻み「フリューゲル参上」
アニメ1期19話に出てくる、フリューゲルの大樹。その幹には「フリューゲル参上」と刻まれています。一方、1期5話のスバルは、ノートに「ナツキスバル参上」と書いています。参上の書き方が同じで、字の癖も似ている。だから、フリューゲルはスバルなのではないか。
この説は、ファンの間では何年も前から有名な話です。でも、ずっと答えられていない穴があります。スバルは、どうやって400年前に行ったのか。
私も前にフリューゲルの動画を出しましたが、ここには答えられませんでした。そのあと、いろんな動画のコメント欄でフリューゲルの予想をたくさんもらったので、もう一度やります。あわせて、前回の「スバルを召喚した犯人」の回で残した宿題、なぜサテラはナツキスバルを選んだのかも回収します。最後に、たぶんまだ誰も言っていない話もします。
おさらい:前の動画の根拠と、残った三つの穴
前のフリューゲル動画の根拠は、次の3つでした。
- 塔の名付けが、スバルと同じ世界の星の感覚になっている
- あちこちに「参上」の刻みが残っている
- シャウラが、匂いでスバルを「お師様」と断言した
ここに、前の動画で使わなかった材料を一つ足します。
三章、白鯨戦の直前。アニメだと1期19話の場面です。スバルは大樹の幹に彫られた名前を見つけて、「修学旅行生じゃあるまいし」「マナーがなってねぇよ、マナーが」と文句を言います(三章)。そしてその直後、「レム、彫刻刀を貸してくれ」(三章)。落書きに文句を言った口で、同じ幹に自分も彫ろうとします。
そして六章20話。エミリアが、大樹の上のほうにフリューゲル参上と刻んであった、と話します。それを聞いたスバルの返しは「修学旅行生かよ」。三章で自分が飛ばした悪口と同じです。地の文には、刻んだときにはまだ大樹は大樹ではなかったはず、とあります。刻みが上にあるのは、木が育ったから。刻んだのは、植えた男です。
しかも、原作は幹の文字が何語かを書いていません。アニメはそれを日本語で描きました。異世界の大樹に日本語。それを見たスバルは驚きもせず、マナーの話で流しています。
前の動画から残った穴は、三つです。
- どうやって400年前に行ったのか
- なぜ、弟子のことを何度も忘れたのか
- なぜサテラは、スバルを選んだのか
この三つは、九章まで読むと一本の線でつながります。
今回の結論
フリューゲルは、サテラに400年前へ送られた、ナツキスバル本人です。
- 帰り道は、死に戻り
- 弟子を忘れたのは、やり直しの摩耗
- サテラがスバルを選んだのは、400年前に自分を封じた男を、先に知っていたから
穴1 どうやって400年前へ行ったのか
ここが一番大きな穴でした。でも九章には、400年を跳んだ人物が実際に出てきます。アルです。
九章で語られるアルの過去。400年前、ある魔女が最後に唱えた術が「オル・シャマク」でした。次にアルが目を覚ましたのは、魔女の痕跡が残っていない世界。そこで魔女のことを尋ねると、返ってきた答えは「何百年も前の話だろ?」(九章)。400年を跳ぶ手段は、作中に存在します。
ただし、ここからが大事です。オル・シャマクは、本来は時間を跳ぶ術ではありません。九章での説明では、相手を封じて動けなくする、対魔女用の禁術です。アル自身も使える術なのに、そのときだけは効果が違った。原文はこれを「自分が扱うときと異なる魔法の効果」(九章52話)と書き、原因を、前提が違ったか、術者の魔女の力が絶大だったからか、としています。
つまり、時間を越えるのに要るのは本人の足ではなく、強大な魔女の術です。スバルは、自分で行ったのではない。送られた。
では、送ったのは誰か。私はサテラだと思います。材料は三つあります。
①封印の方法
六章90話。ユリウスが、暴食の大罪司教を黒い結晶に封じます。その仕組みを、ベアトリスはこう説明します。「シャマクで相手の意識を切り離して」「そのまま固めてあるのよ」(六章90話)。そこにユリウスが付け加えます。「世界で最も有名な封印も、これと同じ術式を採用している」(同)。
その封印とは、嫉妬の魔女の400年の眠りです。サテラの眠りは、シャマクの術で固めたものなんです。
しかもシャマクは、ベアトリスと契約する前のスバルが一番頼ってきた魔法です。そしてアルを跳ばしたのもオル・シャマク。封じる術と、跳ばす術が、同じ系統なんです。
②黒い影
同じ90話の最後。スバルは塔の中で、黒い影に丸ごと呑まれます。影の中で繰り返される「愛してる」。スバル本人も、ここで命を落とすと覚悟しています。ところが目を覚ますと、そこは遠い草原でした。砂の海の真ん中から、緑の平原へ。しかも、死なずに。あの影は、呑んだものを別の場所に出せます。
③力の大きさ
さっきのアルの跳躍で、原因の候補に挙がっていたのは、術を使った魔女の力が絶大だったことでした。そして嫉妬の魔女は、世界の半分を滅ぼした魔女です。絶大な力の魔女を一人挙げるなら、まずサテラです。
だから、私はこう読みます。スバルは、サテラの影に、400年前へ送られた。
帰り方:死に戻りと封印
送られた先から、フリューゲルはどうやって帰ったのか。
シャウラは、お師様がいなくなった日を覚えています。「絶対戻ってくるから待ってろって」「そう言っていなくなったッスよ」(六章)。そして神龍ボルカニカ。「フリューゲルやレイドはどこへいった?」「別れ際に言葉もなくては、シャウラが寂しがるぞ」(六章87話)。別れの言葉もなく、消えています。
もう一つ、九章。400年前の、ある魔女の言葉です。「フリューゲルの遺志を継ごうとする彼らに」「委ねることになる」(九章52話)。
遺志。400年前の時点で、フリューゲルはもう、遺志を残す側でした。
ここから言い切ります。フリューゲルは、400年前で死んだ。死んだから、戻れた。
スバルにとって、死は終わりではありません。帰り道です。「絶対戻ってくる」と言い切れた理由も、別れの挨拶もできずに消えた理由も、これで説明がつきます。
ただし、死ねばすぐ帰れる、という話ではありません。死に戻りの戻り先は固定ではなく、六章の途中でも戻る地点は変わっています。しかも、スバル本人が選んでいるわけではない。400年前では、戻り先もその時代にあった。そこで死とやり直しを重ねて、最後の一回だけ、戻り先が元いた時代だった。
では、何が戻り先を切り替えたのか。私は、封印だと見ています。
フリューゲルはサテラを封じた一人です(このあと原文で見せます)。そして、さっきの封印の仕組みは、相手の意識を切り離して固めるもの。死に戻りがサテラの力なら、戻り先を握っているのもサテラです。サテラの意識が封印で切り離されれば、戻り先の設定は元に戻る。だからフリューゲルは、封印を終えたあとの死で、帰れた。
そもそも、なぜサテラはスバルを400年前へ送ったのか。その先は、サテラの回で話します。
そして、シャウラのこの一言。「お師様が戻ってきてくれて、嬉しかったッス」(六章)。シャウラにとって、戻ってきたお師様。それは、塔にやって来た今のスバルです。約束は、400年かけて、ちゃんと果たされていました。
穴2 なぜ弟子のことを忘れたのか
記憶をなくしたスバルに、シャウラはこう言います。「あーしのこと何回忘れたら気が済むんスか」(六章55話)。昔のお師様の様子も話します。「結構、ポンポン飛んでたッスよ」「朝起きて、あーしが挨拶したら、お前、誰だっけ?」(六章55話)。
朝ごとに、弟子の顔が飛ぶ。ただの物忘れにしては、ひどすぎます。
ここで、作中の前例を出します。アルの権能「領域」です。決めた範囲の時間を、死んで何度でもやり直せる力。九章の地の文が、この力をこう書いています。「自分の心をすり減らすばかりで成長させない」(九章)。そして、もっと直接的な一文。「何億回と繰り返していれば」「自然と脳は記憶を整理し」「本物の思い出を奪おうとしてくる」(九章)。
繰り返すほど、本物の思い出が削られていく。負担は、脳にも残ります。「体の――特に、脳の息継ぎはできない」(九章)。八章でも、アルはやり直しを重ねる前にこう考えています。「その結果、自分の正気がどうなるかも」(八章)。
やり直す力は、万能ではありません。回すほど、中身が削れます。
これを、フリューゲルに当てはめます。400年前のスバルは、誰も自分を知らない時代で、死とやり直しを重ねた。削れたのは記憶。だから、弟子の顔が朝ごとに飛ぶ。やり直すほど、覚えていられなくなる。
塔でのエミリアの評価は厳しいものでした。「お師様の、フリューゲルが悪い人だと思う」(六章)。弟子に、いつ終わるとも知れない400年の苦行を課した人物です。でも、冷たい男だったのではない。擦り切れた果てだった、と私は読みます。
ここで、召喚した犯人の回の宿題を、一段だけ回収します。スバルの体は、溜め込む器だという話。何のために溜めるのか。やり直しには燃料が要ります。400年前で死に続けるための、タンクでもあった。今日言えるのは、ここまでです。
そして、皮肉な一行。90話で、まだ何も知らないスバルがフリューゲルに向けた言葉です。「あいつには、言ってやりたいことが山ほどあるんだ」(六章90話)。その言いたいことの相手は、未来の自分かもしれません。
穴3 なぜサテラはスバルを選んだのか
まず、フリューゲルが400年前に何をしたか。六章87話で、はっきり書かれています。ボルカニカ、レイド、そしてフリューゲル。この三人が、嫉妬の魔女サテラを封じた張本人です。
そしてフリューゲルは、プレアデス監視塔の建設に関わった人物です。九章15話で、その塔が建てられた本当の理由が明かされます。「封印されたそれを、監視しておくためだった」(九章15話)。見張られているのは、嫉妬の魔女。サテラの400年の眠りと、それを見張る塔。その見張り番に置かれたのが、弟子のシャウラです。
シャウラは、さそり座の毒針の星。神話で、狩人オリオンを殺したのはサソリです。そのオリオンが追うのがプレアデス、日本の名前で「すばる」。そして、プレアデスの後ろを追って昇る星がアルデバランです。九章で、その名を持つ男が塔に来て、スバルを封じにかかります。
すばるを追う者が、すばるの塔に来る。だからフリューゲルは、狩人の天敵を門番に置いた。私はそう見ています。
話を戻します。九章52話、400年前の魔女の計画に「彼女のことはあちらに任せ」(九章52話)という一言があります。その直前に出てくるのが、さっきの「フリューゲルの遺志を継ごうとする彼ら」です。400年前、彼女への対処は、フリューゲルの遺志に委ねられていた。つまり、サテラから見たフリューゲルは、自分を400年眠らせた男です。
今度は、サテラの側を見ます。
四章79話。夢の城で、サテラはスバルに「私はあなたに救われました」(四章79話)と告げます。でも、スバルには心当たりがありません。「俺がお前を助けたって言葉の意味もわからない」(四章79話)。そして別れ際。
「そしていつか――必ず、私を殺しにきてね」(四章79話)
サテラは、スバルがまだしていないことを知っています。
七章。暗闇で繰り返される「愛してる」の、最後の一言は「――どこにいるの?」(七章52話)。八章では、死に戻りの直前に聞こえる囁きが「一度自分を見つけた彼女が」「二度と手放すまいと」(八章)。探して、見つけて、もう離さない。
ここまで並べると、答えが見えてきます。サテラは、スバルを選んだのではない。知っていた。 400年前、自分を封じた男。その男の、まだ何も知らない頃の姿を呼んだ。召喚した犯人の回で話した「作り替え」とも、そのままつながります。呼ばれたスバルは、やがて400年前へ送られ、フリューゲルになる。
流れを順に並べます。
- サテラが、スバルを呼ぶ
- スバルは、400年前へ送られる
- フリューゲルとして、サテラを封じ、塔を残す
- 死んで、元の時代へ戻る
- サテラは400年眠り、そしてまた、スバルを呼ぶ
このループには、最初の一回がありません。
名前も、同じループに乗ります。フリューゲルの名前は、実はほとんど歴史に残っていません。魔女を封じた三英傑として語られるのは、シャウラ、レイド、ボルカニカ。功績は弟子のシャウラに押し付けられています。オットーの説明でも、木を植えた以外に何をしたのかよく分からない人です。
名前を消した男が、大樹にだけ名前を残した。その刻みは、日本語で、木の上のほう。読めるのは、未来から来た日本人だけです。名前を残した宛先は、後世ではない。未来の自分です。
スバルは三章で、オットーからフリューゲルの大樹の名前を聞いています。400年前で名乗る名前を、未来で聞いた名前から拾う。仲間はその名で呼び、大樹が残り、次のスバルがまたそれを聞く。フリューゲルという名前は、誰も考えていないのです。
最後に、シャウラの約束。消えていくシャウラの、声にならなかった言葉です。「今度は、お師様があーしを待つ番ッスよ?」「今度は、忘れないでくださいッス」(六章)。塵の中から小さな赤いサソリが這い出して、スバルの手に寄り添います。
素直に読めば、400年待った側から、今度は待たれる側へ。でも、お師様がスバルなら、この約束はループの次の周に向いています。
おまけ:大樹の刻みの「点」
ここからは、遊び半分の話です。
「ナツキスバル参上」も、400年たって字が消えたら「フリューゲル」と読めるのではないか。そういうコメントをもらって、見比べて私が見つけたのが「点」です。
1期5話の、スバルのノート。「ナツキスバル、参上」は2行に分けて書かれていて、なかぐろは4文字目です。大樹の刻みも2行に見えます。そして、ちょうど4文字目の位置に点がある。「フリューゲル参上」という文字に、なかぐろはありません。点の位置だけが、スバルの書き方と一致しています。
木の幹ですから、点に見えるものは他にもあります。樹皮の模様の可能性のほうが高いです。根拠には数えません。見つけてしまったので、置いておきます。
コメント返し
フリューゲルとスバルは、転生か、複製か、それとも若返った本人か。 今回の答えは「本人」です。ただし向きが逆で、今のスバルが400年前へ行きます。
本人なら、なぜフリューゲルと名乗ったのか。 答えは、さっきの名前のループです。
功績をシャウラに押し付けた男の名前が、なぜ大樹にだけ残ったのか。 未来のスバルが、その名前を聞くためです。
400年前で奮闘し、サテラを封じて、400年後へ。 「いずれやります」と返した回が、これです。
400年前のスバルが、400年後に来る自分に向けて仕組んだ。 次に来るスバルである自分へ。
コンビニから400年前へ転移し、死んで400年後へ、という読み。 違うのは、転生か、死に戻りか。記憶が残らないところは、今日の摩耗が引き受けます。
死んだら代償に記憶を失って、生き返っていた。 複製体説の方の読みですが、ここは今日の摩耗の話と重なります。同じループの発想は、コメント欄に先に出ていました。
この説の弱点
- 作中に、過去へ跳んだ実例はありません。九章の跳躍は、未来向きだけです
- サテラが送った、という記述もありません。90話の影も、呑まれた直後にボルカニカの光が差し込んでいて、どちらが運んだのかは書かれていません
- 「遺志」という言葉が、死を意味するとも限りません
- 封印で意識を切り離したはずのサテラが、夢や影で現れることも、この読みでは説明が要ります
- 400年前での戻り先の話も、本文には何もありません
それでも、三つの穴を一本で通せる読みは、これしか見つかりませんでした。
まとめ
フリューゲルは、サテラに400年前へ送られた、ナツキスバル。死んで帰り、削れながら、それでも塔を残した男です。
そして、フリューゲルの塔には、もう一つ名前が隠れています。それは、別の回で。
原作:長月達平『Re:ゼロから始める異世界生活』(小説家になろう/MF文庫J・KADOKAWA)。 本文中の原作の引用は、考察・批評を目的とした引用です。