伏線書庫叡智の書

動画の解説 ― 台本を、読める形で。

考察

【リゼロ考察】フリューゲルの目的とは?塔を建てた本当の理由

ネタバレ注意:原作第九章までの内容を含みます。
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導入

賢者フリューゲルが建てた、プレアデス監視塔。見張りのための塔のはずなのに、この塔、中身がおかしいんです。

死んだ人の人生を記録した、本の図書館。私たちの世界の夜空を知らないと、解けない試験。そして、400年たった一人を待ち続けた弟子。

魔女を見張るだけなら、どれも要りません。フリューゲルは、何のためにこの塔を作ったのか。答えは、塔の書庫にあった一冊の本が教えてくれます。

前提

前提をひとつだけ。このチャンネルでは前回、フリューゲルの正体を、400年前へ送られたナツキスバル本人だと話しました。ただし本文では、シャウラの言うお師様がフリューゲルなのかスバルなのかは、最後まで確定していません。今日の話は、この説の上に立っています。

表の目的

正体が分かったなら、次は目的です。

まず、塔が建てられた理由そのものは、原作に書いてあります。九章15話、アルデバラン視点の地の文です。

「――封印されたそれを、監視しておくためだったのだから」(九章15話)

封印されたそれ、つまり嫉妬の魔女です。表向きの目的は、魔女の見張り。ここは確定です。でも、それだけでは説明のつかないことがあります。

クリアできる塔

この塔は、クリアできるんです。試験を越えられると、塔の役目は一新され、シャウラは眠りにつく。90話でエミリアは、フリューゲルをこう振り返っています。「プレアデス監視塔の役割の一新と共に、彼女を眠りにつかせた張本人」(90話)。

見張りの塔に、終わらせるための出口が最初から作ってある。つまりフリューゲルは、誰かがここまで来て、最後まで越えることを前提に塔を作っています。

塔の試験に挑んだとき、スバル自身もこう言っています。「基本的に問題ってのは解かれることを想定して作るもんだ」。

では、その誰かとは誰なのか。

本命:塔の本当の目的

結論から言います。

フリューゲルの目的は、400年後に記憶をなくしてやって来る自分を、もう一度ナツキスバルに戻すこと。

この塔は丸ごと、記憶をなくした未来の自分に宛てた、引き継ぎの装置です。

塔の名前と大樹

そもそも、この塔は名前からして宛先が書いてあります。塔の名前はプレアデス。各階の名前も、プレアデス星団の星からとられています。その各階に名前を付けたのは、フリューゲルです。

プレアデス星団は、日本ではこう呼ばれます。すばる。最初のフリューゲルの動画でも話した、塔の名前に隠れたスバルの名前です。

名前の置き土産は、塔の外にもあります。六章で、シャウラが初めてお師様の名前を明かしたとき、スバルはこう返しました。「……それ、木ぃ植えた人の名前じゃん」(六章)。

スバルがフリューゲルの名前を最初に知ったのは、塔ではなく一本の木でした。フリューゲルの大樹です。

三章の白鯨戦。白鯨は、この大樹の下敷きになって動けなくなり、そこをヴィルヘルムが両断しました。三章最大の勝利。その決め手の一つが、400年前にフリューゲルが植えた木です。

自分がいつ、どこで戦うかを知っている男なら、そこに木を植えておくこともできる。

招待状

そして、入口より前に、招待状があります。

世間では、塔にいる賢者はシャウラだと伝わっていました。90話のエミリアの振り返りには、こうもあります。「賢者としての功績をシャウラに押し付け」(90話)。

スバルたちが塔を目指した理由は、まさにその伝説でした。「当初の目的は、プレアデス監視塔にいる賢者シャウラと接触し、その全知とうたわれる知恵を借り」。レムを救いたいスバルは、全知の賢者に会うために砂丘を越えました。

もし伝わっていたのが、賢者フリューゲルは400年前に死んだ、だったら。誰も、この塔を目指しません。今も塔に生きている、全知の賢者。だから、困った人間がやってくる。功績をシャウラに渡したのは、塔に今も誰かがいることにしておくためです。

ところが、招いておいて、この塔は撃ってきます。この矛盾を解くのが、一つ目の根拠です。

根拠①入口

ここからは塔の中身を、外から順に見ていきます。

一つ目は、入口。この塔には、そもそも人を入れる気がありません。シャウラは、お師様からこう言いつけられていました。「誰に何を聞かれても、余計なことは言わない話さない教えないっていうかぶっ刺せ」。

近づく者は、塔から撃ち抜く。その狙撃の仕組みも、シャウラに言わせるとこうです。「ヘルズ・スナイプはお師様の考案ッスよ?」。実際、このヘルズ・スナイプで、スバルは十度以上殺されています。

なかに入っても同じです。塔には五つのルールがあり、誰かが破れば、シャウラが大サソリに変わってスバルたちを殺しにくる。しかも、誰が何を破ったのかは、原作でも最後まで明かされません。

六章の地の文は、このルールの作り手をこう呼んでいます。「この、性格の悪い塔のルールを作った人物」(六章)。

一度きりの命では、まず登り切れない塔です。招くのに、撃つ。答えはひとつです。登り切れるのは、撃たれても、全滅しても、死んでやり直せる人間だけ。そして400年後、その力を持った男が現れます。

根拠②三層の試験

二つ目は、三層の試験です。出される問題は、これです。

「――シャウラに滅ぼされし英雄、かの者の最も輝かしきに触れよ」

シャウラは、サソリ座の星の名前。サソリに刺されて死んだ英雄といえば、オリオン。部屋に並んだ石板の数と配置が、そのままオリオン座と一致していました。スバルの地元の星空を知っていれば、解ける問題です。

解いたあと、スバルはこう言っています。「解ける可能性のある奴が、そもそもずっと少ない」。この試験は、スバルと同じ星空を知る人間に向けて作られています。

根拠③書庫と一冊の本

そして三つ目。今日の本題、書庫です。

三層には、死んだ人の人生を記録した、死者の書が並んでいます。六章で、スバルは暴食に一年分の記憶を喰われました。異世界に来てからのことを、全部忘れた状態です。

そのスバルが、書庫で一冊の本を見つけます。書かれていた名前は。ナツキスバル。生きているはずの、スバル自身の死者の書です。

しかも、このタイトルは漢字でした。

「このナツキスバルの書のタイトルは、漢字で書かれているのだ」

この世界の人間が見ても、模様にしか見えない文字です。地の文は、この本をこう書いています。「スバル以外には通用しない、しかしスバルにだけ効果を持つ猛毒」。

本は一冊ではありませんでした。一冊読み終えるたびに次の一冊が見つかり、死んだ順番どおりに進んでいく。スバルはそれを読み進めて、記憶をなくす前の自分と出会い、一つに戻ります。

記憶のある自分は、こう言いました。「俺とお前がここで顔を合わせたのは、俺とお前の唯一の接点がここだからだ」。記憶のあるスバルと、ないスバル。二人がもう一度会える場所は、この書庫だけだった。

そして本を見つけた瞬間、スバル自身がこう思っています。「――誰かの、既定路線」。偶然じゃない。誰かの思惑だ、と。

反論:書庫は魔女が作った

ここで、原作を読んでいる方からは反論が出ると思います。冒頭で出した九章15話の一文。実は、その前半にこう書いてあります。

「その、塔が建てられた理由は、戦いに疲れた賢者が隠居するためでも、知りたがりの魔女がオドラグナをだまくらかして作った趣味の悪い書庫を置きたかったからでもない」(九章15話)

書庫を作ったのは、魔女。そして塔が建った理由も、書庫ではない。ここは、その通りです。この動画も、建てた理由は魔女の見張りだと認めています。

問題は、建てた理由ではありません。建てたあと、そこに何を置いたかです。

書庫を作ったのは魔女。でも、その書庫を守らせたのは誰か。さっきの五つのルール、その三つ目です。「三、書庫への不敬を禁ず」。

このルールの作り手の名前は、本文には出てきません。でも、塔を作った賢者のほかに、塔のルールを決められる人間がいるでしょうか。

本を作ったのは魔女。でも、その本棚に手を出させない決まりを置いたのは、フリューゲル。そしてスバルは、その棚から自分を取り戻しました。

想定外の統合

もう一つ、引っかかる一文があります。記憶が一つに戻ったあと、スバルはこう感じていました。「本来なら、統合なんてプロセスはこの場所で行われる想定にない」。想定外の出来事だった、と。

たしかに、今を生きる人間から見れば想定外です。でも、スバルがフリューゲルなら、話が変わります。この塔で何が起きるかを、一度通ってきて知っていることになる。暴食に記憶を喰われることも、自分の本が棚に並ぶことも。だから、それを越えられる塔を作った。

塔を作った自分と、塔を通る自分。どちらが先かは決められない、輪のような話です。

忘れる男

しかもフリューゲルは、忘れることの怖さを誰よりも知っていた男です。シャウラによると、朝起きて挨拶すると、お師様はよくこう言ったそうです。

「お前、誰だっけ? 覚えてねぇなぁ。知らねぇなぁ」

これを聞いたスバルは、悪ふざけなのかどうか判断がつかない、と返しています。でもこのチャンネルでは、本当に忘れていたと読みます。前回話した、死に戻りを重ねた摩耗です。

忘れる準備は、シャウラにもされていました。最期の場面で、シャウラは塔のルールをこう振り返っています。

「それがなくては忘れっぽい自分は、すぐに色んなことを忘れてしまったとも思う」

ルールは、シャウラを縛る鎖であると同時に、記憶をつなぎ止める杭でもあった。

忘れる弟子には、ルールを。忘れる自分には、本を。フリューゲルは、忘れることを前提に、全部を置いていった男です。

記憶の回廊の支配者

最後に、もう一つだけ。

記憶が戻った直後、二人のスバルは、記憶の回廊の本当の支配者について話しています。スバルが、死者の書と地続きではないかと考えていた場所です。二人が口をそろえて挙げた名前が、これでした。

「――賢者フリューゲル」

本文では、あくまで二人の推測です。でも、今日の話と並べると、筋が通ります。自分の記録が残る場所を、自分で押さえておいた。そう読めば、書庫に漢字の本があったことにも説明がつきます。

まとめ

まとめます。

表の目的は、嫉妬の魔女の見張り。裏の目的は、400年後に記憶をなくしてやってくる自分を、もう一度ナツキスバルに戻すこと。

  • 塔の名前には、すばる。
  • 外には、白鯨を止めた木。
  • 入口は、死に戻りでしか越えられない。
  • 試験は、日本の夜空でしか解けない。
  • 書庫には、漢字で書かれた自分の本がある。

全部、一人の男のために置かれた仕掛けです。

エミリアは90話で、フリューゲルをこう言いました。「――お師様の、フリューゲルが悪い人だと思う」(90話)。シャウラを400年待たせて、スバルを泣かせた人です。たぶん、それは正しい。でも、その悪い人が400年かけて用意したのは、未来の自分が一冊の本にたどり着くための道でした。

シャウラが最後に残した言葉は、これです。「今度は、忘れないでくださいッス」。

忘れても、戻ってこられるように。全部を仕組んでおいた男。それが、フリューゲルです。

原作:長月達平『Re:ゼロから始める異世界生活』(小説家になろう/MF文庫J・KADOKAWA)。 本文中の原作の引用は、考察・批評を目的とした引用です。

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