考察
【リゼロ考察】フリューゲルって結局何者なの?シャウラの「お師様」の正体
第六章まで読んだ・見たので、本文を開く 本文をたたむ
ゼロ層メローペの矛盾
リゼロの原作に、たった1行で世界の見え方が変わるセリフがあります。第六章20話。プレアデス監視塔のゼロ層について聞かれた、シャウラの返事です。
「ゼロ層ッス。おしさまが名付けたんスから、当たり前ッス」「ただ、おしさまがいなくなってからできた場所なんで」(六章20話)
名付けたのは、いなくなった人。でも、その場所ができたのは、いなくなったあと。順番が、逆なんです。しかもシャウラは、ひと息でこれを言っている。矛盾に気づいていない。
今日はこのねじれを起点に、彼女が400年待ち続けた「おしさま」がなにものなのかを詰めていきます。最後に1本の線でつながるので、途中で飛ばさないでもらえると嬉しいです。
なお、この動画は原作第六章までの情報だけで作っています。それより先の話は出てきません。
前提:フリューゲルとは誰か
前提を30秒だけ置きます。
フリューゲル。400年前の賢者とされる人物で、初登場は第三章45話です。オットーの説明が「数百年前、フリューゲルって賢者が植えたって伝承が残ってるそうで」(三章45話)。街道にそびえる巨木、フリューゲルの大樹を植えた人です。ただしオットーはこうも言います。「樹を植えたって話以外に、なにをしたのかイマイチわからない人でして」(三章45話)
400年前の偉人なのに、業績が木を1本植えたことしかない。
そして第六章、監視塔にいたシャウラは賢者ではなく、彼の弟子でした。賢者の功績は、師から彼女へ押し付けられたものです。つまりフリューゲル本人は、いまだ誰の前にも現れていない。名前と、木だけが残っている。
結論
結論から言います。
シャウラが400年待っていたおしさまはフリューゲルで、そのフリューゲルは、ナツキ・スバル本人だと思います。
未来のスバルが400年前に飛ばされて、塔を建て、木を植え、彼女を残した。根拠を5つ、種類を変えて重ねていきます。
①刻まれた「参上」
ひとつめ。刻まれた文字です。
第六章20話で、エミリアが大樹の名前の由来についてこう言います。「あの大樹の上の方に、『フリューゲル参上』って刻んであったからよね?」(六章20話)
賢者の名が後世に伝わった理由は、これだけです。木に彫られた落書き。400年前、誰かが巨木のてっぺんに、自分の名前と参上を彫った。
では、第六章44話を見てください。記憶を失ったスバルが朝起きると、自分の左腕に文字が刻まれている。地の文はこう書きます。「どう見ても『ナツキ・スバル参上』と書いてある」(六章44話)。そして「スバルの方に見えるように、汚い字で、日本語で」(六章44話)と続く。日本語です。この世界の誰にも読めない文字で、自分の腕に彫っている。
さらに50話。閉じ込められた部屋を抜け出したあと、その部屋の壁がこうなっている。『ナツキ・スバル参上』が、壁一面。びっしり、病的な密度で。
400年前の巨木のてっぺんと、監視塔の部屋の壁。同じ癖です。高いところ、目立つところに、自分の名前と参上を刻む。
しかもこのふたつは第三章と第六章に離れて置かれていて、作中の誰ひとり結び付けていません。
②プレアデスと欠けた七つ目
ふたつめ。塔の名前です。
階層名を、シャウラが読み上げます。
「マイア、エレクトラ、タイゲタ、アルキオネ、ケラエノ、アステローペ」
全部フリューゲルの命名で、全部プレアデス星団を構成する星の名前です。プレアデス星団。日本語の名前を、すばる、といいます。400年前の異世界人が建てた塔に、主人公の名前がそのまま冠されている。
さらに20話で、スバルはこの並びを聞いた瞬間に7つ目を言い当てます。「とあるななしまいの最後のひとりの名前。プレイアデスなら、ななつないとおかしい」(六章20話)
6つしかない階層名を聞いて、欠けている7つ目を即座に指摘した。シャウラは息を呑んで沈黙します。地の文は、スバルが確信に触れたと書く。設計者しか知らないはずの隠し階層を、初対面の来訪者が名指しした瞬間です。
そして地の文がこう書きます。「これはスバルにとっては隠れていなかったも同然のものだからだ」(六章20話)
③オリオン座の試験
みっつめ。試験の中身です。
第六章22話、3層タイゲタの試験。答えは星座でした。スバルは言います。「シャウラに滅ぼされた英雄、その名前はオリオンだ」(六章22話)。地の文は「オリオン座を形成する、主要な星々のそれと数も配置も一致する」(六章22話)と書きます。
オリオン座の並びを知らないと、絶対に解けない試験です。この世界にオリオン座という概念はない。ギリシャ神話も、当然ない。出題者は地球の星座を知る人間で、そして解答者も地球の星座を知る人間だった。
25話の地の文は、フリューゲルを「スバルと同じく異世界へと召喚された現代人」(六章25話)と書き、20話ではさらに踏み込みます。「もはや疑いの余地もなく、フリューゲルはスバルと同郷の人間だ」(六章20話)
同郷まではスバル自身が断定しています。残るは、本人かどうかだけです。
④顔ではなく臭いでの判定
よっつめ。シャウラが、なにを見て彼を判定したのかです。
彼女は会って数秒でスバルをおしさまと呼びます。当然、全員が反論する。
第六章19話、アナスタシアが銀貨を見せます。銀貨の刻印は、賢者の肖像です。スバルの第一声が「若いイケメンのお兄さん、だな。シャウラとは似ても似つかない」(六章19話)。地の文も「刻まれているのは長髪の、精悍な顔立ちをしたびじょうぶだ」(六章19話)と書く。どう見てもスバルではない。
ここで話が終わりそうになります。ところが、ベアトリスがこの直後に決定的な一行を置くんです。
「でも、世間的にシャウラと思われてるのはこの絵の奴なのよ」(六章19話)
世間は賢者をシャウラだと思っていて、その賢者として、男の絵が刻まれている。実物のシャウラは半裸の美女です。地の文も、半裸の美女には見間違えられそうもない、と書く。つまりこの銀貨、実在の人物と一致しないことが、本文の中で先に証明されている。
顔を知る人間がひとりもいない相手の肖像です。後世が、賢者ならこうだろうで作った理想像でしかない。だからスバルと似ていないことは、反証になりません。
では、シャウラはなにで見分けたのか。本人がこう答えます。
「あーしがおしさまのこと見つけたのは、見た目の話じゃないんで問題ないッス」「においッス」
そして、そのにおいの中身をこう説明する。
「こんな鼻が曲がりそうなぐらいどす黒くてエグイにおいプンプンさせて平気な人なんて、おしさま以外には考えられねッスもん」
どす黒い、におい。スバルがまとっている特有の臭いで、心当たりはひとつしかありません。魔女の残り香です。第二章21話でレムが感知して、あなたは魔女教の関係者ですかと詰め寄った、あれ。
シャウラの判定基準がこれなら、話が変わります。400年前のおしさまも、同じにおいをまとっていた。つまり魔女に関わっていた人間だということになる。
顔ではなく、においで400年越しに同一人物と判定された。 これはかなり重い証言だと思います。
⑤朝には昨日を忘れている師匠
いつつめ。ここが一番大きいと思っています。
第六章55話。記憶を失ったスバルに、シャウラがこう言います。
「おしさま、また記憶なくしたッスか? あーしのこと何回忘れたら気が済むんスか」(六章55話)
何回、です。今回が初めてじゃない。
引っかかったスバルが、直接聞き返します。おしさまはそんなに記憶が飛ぶのか、と。
「結構、ポンポン飛んでたッスよ」「朝起きて、あーしが挨拶したら『お前、誰だっけ? 覚えてねぇなぁ。知らねぇなぁ』ってよく昔の女扱いされたッス」(六章55話)
400年前のフリューゲルは、朝起きると弟子を忘れている人間だった。 何度も、繰り返し。
ここで先に、ありがちな誤読を潰しておきます。これは死に戻りでは説明できません。死に戻りは、スバルが記憶を保ったまま世界のほうが巻き戻る力です。忘れるのは周りで、本人じゃない。だから、師匠のほうが弟子を忘れるという現象は、死に戻りとは向きが逆なんです。
説明がつく筋がひとつだけあります。スバルが400年前を、複数回、順番バラバラに訪れているという読み方です。
シャウラにとっては、昨日も今日も続いている日々です。でもスバルにとっては、その朝が何度目の訪問かで話が変わる。今朝現れたスバルにとって、そこが初めての訪問だったら。昨日親しくしていた彼女を、知らない。お前、誰だっけ。そうなります。
そして、この55話には作者からの合図も入っています。地の文はこう書く。「前回まではさらっと流せたシャウラのざれごとだが、ここまでくると、微妙に聞き流せない雰囲気の発言である印象が強い」(六章55話)
ここは流すな、と書いてあるわけです。
この説の弱点
ここで、この説の弱点を先に言っておきます。
スバルが400年前に行く方法が、原作にまだ描かれていません。 ここが穴です。
ただ、この世界で時間に触ること自体は禁じ手じゃない。レグルスの権能は、触れた物体の時間を止める力でした。スバルとベアトリスのE・M・Mも、自分たちの肉体の時間を止める魔法です。空間のほうも、ベアトリスの扉渡りと、砂丘の空間の捩れが実在しています。
そして第六章73話で、スバル自身がこう自問するんです。死に戻りは時間を遡っているのか、それとも世界を作り直しているのか。答えを出さないまま、彼は思考を打ち切ります。主人公が、自分の力の正体をまだ知らない。
ゼロ層に戻る
ここで、冒頭のねじれに戻ります。
ゼロ層メローペ。おしさまが名付けたのに、できたのはおしさまがいなくなったあと。しかも、入り方を聞こうとしたスバルを、シャウラは早口で遮るんです。
「ダメッスよ」「まだ、条件が満たされてないッス」
まだ、です。400年待った相手が、いま目の前にいるのに。
この矛盾と、この拒否。おしさまがナツキ・スバルなら、両方まとめて解けます。
シャウラにとっての400年前は、スバルにとってはまだ来ていない未来です。ゼロ層は、スバルが400年前へ行ったあとにできる場所。だから名前だけが先に届いている。そして条件が満たされていない理由も、そのままです。スバルがまだ、400年前に行っていないからです。
まとめ
整理します。
- 高いところに参上と刻む癖
- すばると名付けられた塔
- オリオン座の試験
- 顔ではなくにおいでの判定
- そして、朝には昨日を忘れている師匠
5つとも、フリューゲルはナツキ・スバル本人だという一点で説明がつきます。
もちろん確定ではありません。フリューゲル本人は最後まで一度も登場しないし、原作はここに答えを出していない。外れる可能性は普通にあります。それでも、第三章の巨木と第六章の壁みたいに、離れた場所の記述がつながる瞬間が一番おもしろいと思っています。
シャウラの周りには、名前しか出てきていない人物がもうひとりいます。かか様です。そっちは別の動画でまるごと1本やっているので、よかったら概要欄からどうぞ。
リゼロふくせんしょこでした。
原作:長月達平『Re:ゼロから始める異世界生活』(小説家になろう/MF文庫J・KADOKAWA)。 本文中の原作の引用は、考察・批評を目的とした引用です。