奪還編の解説
【リゼロ奪還編4話】原作との違いと伏線を全部解説|一途な星
第六章72話まで読んだ・見たので、本文を開く 本文をたたむ
喪失編でアナスタシアが見抜いていたこと
喪失編で、アナスタシアが指を5本立てた場面を覚えているでしょうか。塔の決まり事は、よっつじゃなくていつつあるんじゃないか。そう聞いた場面です。
あのときシャウラは絶句して、それでも、いつつめはないッス、と答えました。
今回、その五つ目が出てきます。
今スバルたちを塞ぐ五つの障害
今日は大事なところを三つに絞って、順番に見ていきます。
本題の前に、今回の枠組みを確認します。今スバルたちを塞いでいるものを、五つに整理しておきます。
一つ、塔へ一斉に押し寄せる魔獣の大群。二つ、スバルの記憶や名前を狙ってくる暴食。三つ、塔の中に入り込んで、死角から襲ってくる巨大サソリ。四つ、敵味方おかまいなしに暴れ回るレイド。そして五つ目が、すべてを呑み込んで台無しにする黒い影です。
この黒い影だけは、今回まだ正体が説明されません。今日の話は、全部この五つのどれかに関わります。
一つ目 シャウラが隠していた五つ目のルール
ここから本題です。一つ目。シャウラが隠していた、五つ目のルールです。
ここに入る前に、スバルの状態を確認しておきます。この時点でスバルは、何度も死んで、何度も戻ってきています。そして、持ち帰れるものがある限り、無駄な死ではないと自分に言い聞かせていた。原作はそれを、自分の無力さから目をそらすための欺瞞だった、と書きます。今回の行動は、そこから始まっています。
まずスバルは、あの巨大サソリの正体に見当をつけていました。コル・レオニスという権能で、仲間の居場所と体調が分かるようになっています。その反応の一つが、あの巨大サソリと重なっていました。ただ、それは感覚でしかない。だから本人に直接聞きにいきます。
このときスバルは、二つの賭けをしています。
一つ目の賭けが、あの質問です。
お前、俺が死ねって言ったら、死んでくれるのか。
シャウラの返事に、ためらいはありませんでした。おしさまが死ねって言うんなら死ぬッスよ、と。
嘘でも冗談でもなく、本音でそう答えられたことが、スバルの胸を刺します。
ここでスバルが確かめたのは、シャウラが敵かどうかではありません。心無いことを言われたとき、彼女が本性を出して襲ってくるかどうかです。その賭けには勝った。でも、賭けは一度では終わりません。
続けてスバルは、でかいサソリに化けられるか、と直球で聞きます。シャウラは、化けるとはニュアンスが違うが、できると答えました。
原作ではこのあと、シャウラが自分の姿について話します。かか様とおしさまがデザインしてくれたこの姿が一番だ、と。かか様というのは、原作でも最後まで正体が明かされない名前です。アニメではこの場面ごとありません。別の動画で1本使って考えているので、気になったら概要欄から見てください。
二つ目の賭けが、塔のルールです。
ここで、喪失編のあの場面を思い出してください。アナスタシアが指を5本立てて、決まり事はいつつあるんじゃないかと聞きました。シャウラは絶句します。図星だったからです。それでも彼女は四つまで数えて、いつつは、あー、ないッス、と答えました。エミリアも、全部で四個の決まり事、と確認しています。そのうえでシャウラは、今度は嘘じゃねッス、と誓いました。
今回、その誓いが嘘だったことが分かります。
今回、スバルはもう一度、同じことを聞きにいきます。シャウラが数えたルールは、やはり四つまででした。
試験を終えずに去ることを禁ず。試験の決まりに反することを禁ず。書庫への不敬を禁ず。塔そのものへの破壊行為を禁ず。
指を折りながら、五つ目のところで手が止まります。そして、ないッス、と言う。つまりシャウラは、最初からずっと数をごまかしていたことになります。
ここが今回いちばん大事なところです。彼女がルールを隠していた理由は、塔の側の思惑ではありませんでした。
これを話したら、おしさまは試験のクリア方法に気付いてしまう。気付いたら、みんな塔を出ていってしまう。
スバルたちが塔に来て、まだ四日目。そのうち最初の2日はスバルが寝込んでいたので、話せたのは2日だけです。400年待って、手に入ったのがその2日でした。それが終わるのが嫌だった。
400年という数字が、ここで初めて重さを持ちます。
話しているあいだに、シャウラの様子が急に変わります。きっかけは、彼女自身の言葉でした。
誰かが、ルールを破ったッス。
つまりシャウラの変貌は、感情ではなく、ルール違反が引き金になっています。これも喪失編で、シャウラ自身が説明していました。ルール違反があると勝手にビビッときて、キリングマシーンになる、と。今回の変貌は、その説明のとおりに起きています。
ところが、誰がどのルールを破ったのかは、原作で最後まで明かされません。ただ、絞り込みはできます。禁じられていたのは四つでした。気になるのは、レイドが二層の試験会場を離れて塔内を歩き回っていることです。試験官が持ち場を離れるのは、決まりに反することにならないのか。あくまで私の推測です。
黒目が三つに分かれ、左右で6つの複眼になる。体温が上がって、赤い蒸気が立ちのぼる。
変わりきる前に、彼女はスバルに、死ねと命じてくれと頼みます。化け物になっておしさまを殺す前に、殺さずに済む道を選ばせてくれ、と。
そのうえで、五つ目のルールを口にしました。
五、試験の破壊を禁ぜず。
試験を壊すことだけは、禁じられていない。四つ目までが禁止で、五つ目だけが許可になっています。この一行が、このあとの塔攻略の前提になります。
そして、スバルの答えです。さっきのあれは嘘だ、と言って、バルコニーから飛び降りました。助かる方法は用意していません。ただの身投げです。最初から、この周回はそうするつもりでした。
落ちていくスバルを、シャウラが追いかけます。殺すためではなく、助けるために飛び込んでくる。それを見て、スバルはこう言います。
俺は、お前を助けていいんだな。
誰を助けて、誰を守って、誰を愛するのか。それを自分の目で確かめるために、スバルは1回ぶんの死を使いました。
落ちながら変わっていくシャウラへ、届かないと知って言い残します。
必ず、助けてやる。
二つ目 死の意味が変わる
二つ目。スバルにとって、死の意味が変わります。
3話で見たとおり、権能は死に戻りを跨いでも消えません。だから戻った直後から、仲間全員の居場所が分かる状態です。ただ、そのぶん体はぼろぼろのままです。原作では、その理由が説明されています。コル・レオニスはラムの不調を肩代わりする力で、その負担が、死んでも解除されずに続いているからです。アニメでは触れられません。
その前に、レイドについて整理しておきます。彼は四百年前に死んだ、初代の剣聖です。なぜ今この塔にいるのか。
答えは、死者の書にありました。死者の書は、死んだ人の生前を追体験できる本です。ところがレイドの本には、彼の記録が入っていませんでした。記録が、別の使われ方をしていたからです。試験官としてのレイドを、この塔に再現するために使われていた。つまり今いるレイドは、本人ではなく、記録から作り直された存在です。
そして記録が抜けて空っぽになった本が、記憶の回廊へ通じていました。スバルがルイと出会ったのは、そのためです。
その状態で、スバルは塔の二層へ向かいます。そこで、レイドがロイを足蹴にして弄んでいました。ユリウスが止めに入ります。それ以上、敗者を貶めるべきではない、と。それを聞いたレイドが、騎士の在り方ね、と呟きます。そして倒れたロイに向かって、こう言いました。
オメエ、面白えこと言ってたな。オレを喰らい尽くすってな。それを、させてやるよ。
喰われたのではなく、レイドが自分から差し出しています。喰った相手を再現する権能を逆手に取って、中身を塗り潰すためです。なぜ急に気が変わったのか。レイドはそこを説明しません。
ここでスバルは、レイドに斬られて死にます。ただ、倒れながら指を1本立てて、こう言いました。
これが、カウントワンだ。
ここまでの死は、打つ手がなくて重ねた死でした。ここから先は、情報を持ち帰るために、自分で決めて払う死になります。死に戻りの意味が、罰から手札へ変わる場面です。
原作では、この宣言が1回目でした。アニメはその前の身投げをすでに0として数えているので、一つ増えています。
カウントごとに、その周回で分かったことが3行ずつ残ります。
1カウント目。レイドと暴食の合流は止められない。ユリウスなら勝機はある。そして、ナツキ・スバルには勝ち目がない。
2カウント目。エミリアとラムに協力してライを先に倒す、失敗。ベアトリスの奇襲は、暴食には相性が悪い。
7カウント目。暴食は、不利になれば逃げる。放置したレイドは、必ず最後にスバルを殺しにくる。
10カウント目。メィリィと塔の外へ出ると、魔獣を誘き出せる。魔獣の狙いはスバル。影も巨大サソリも、おそらく同じ。ナツキ・スバル単体では、メィリィを守れない。
そして15カウント目。もう二度と、自分より先に誰かを死なせない。
注目してほしいのは、この最後の一行です。1カウント目は、自分に勝ち目がないという確認でした。10カウント目も、自分ひとりでは守れないという確認です。ところが15カウント目だけ、戦い方の話ですらありません。もう二度と、自分より先に誰かを死なせない。これは決意です。
負けの記録を15回積んだ先で、観察が決意に変わっています。
なお原作では、7カウント目と15カウント目の中身が入れ替わっています。10カウント目もありません。アニメが並べ替えて、1回足したことになります。
三つ目 書庫にあってはいけない本
三つ目。書庫に、あってはいけない本が見つかります。
死者の書は、死んだ人の生前を追体験できる本でした。それが並んでいるのが、塔の書庫、タイゲタです。
死を重ねたスバルは、その書庫で足が動かなくなります。怖いからではありません。俺じゃダメだ、お前が必要なんだ、と叫んでいます。呼んでいる相手は、喰われて消えたナツキ・スバルです。自分では足りない、と決めつけている状態でした。
仲間の反応とは別に、消えそうなくらい弱い光が一つある。手を伸ばして引き抜いた本の背には、こう書かれていました。
菜月昴。
スバルの名前が、漢字で書かれた死者の書です。
死んだ人の本しかないはずの棚に、生きているスバルの本がある。しかも、ここまでで死んだスバルは、死に戻りで消えたはずの存在です。
消えたはずの死が、外側から記録されていた、ということになります。
誰が、何のために記録しているのか。そこは今回、まだ出てきません。
次回の見どころ
最後に、次回の見どころです。
一つは、試験の破壊を禁ぜず。このルールを実際に使うのかどうか。
もう一つは、レイドとの決着です。今のところ、勝ち目はないと書かれています。
どちらも、今日の内容がそのまま前提になります。来週のサブタイトルが出たら、原作のどのあたりかを説明欄に書いておきます。
原作:長月達平『Re:ゼロから始める異世界生活』(小説家になろう/MF文庫J・KADOKAWA)。 本文中の原作の引用は、考察・批評を目的とした引用です。