奪還編の解説
【リゼロ奪還編3話】原作との違いと伏線を全部解説|五つの障害
第六章65話まで読んだ・見たので、本文を開く 本文をたたむ
はじめに(ネタバレ範囲)
原作でいうと、Web版第六章の62話から66話に当たります。同時多発の回なので、順番に整理していきます。
62話 帰還と、空白の本
まずは62話、死者の書から戻ってきた場面です。前回のラスト、記憶の回廊で、レムの声に立ち上がったスバルが、現実へ帰ってきました。
ここで大事な話が、二つ確定しました。
一つめ。死者の書の正体です。死者の魂は、オド・ラグナの足下、記憶の回廊へ辿り着きます。そこで、記憶という汚れを洗い落として、まっさらになって、次の人生へ向かう。その、削ぎ落とした記憶を写し取った記録が、死者の書です。あの書庫は、世界が死者を記憶している場所、ということです。
二つめ。レイドの本だけが白紙だった理由です。ベアトリスの仮説は、こうです。「レイドの記憶は閲覧じゃなく、再現に使われているかしら。」
試験官のレイドを塔に再現するために、記録そのものが使われている。400年前に死んだはずの初代剣聖が、目の前にいる理由に、初めて説明が一本通りました。ただし、これはまだ仮説です。頭の片隅に置いてください。
63話 五つの障害
続いて63話。塔を揺らし続けた地響きの正体は、砂丘中の魔獣が、押し寄せてくる足音でした。
ここでサブタイトルの回収です。塔に同時に降りかかる問題が、全部で五つ。
一つ、魔獣の大群。 二つ、暴食の大罪司教。 三つ、塔の中をうろつく巨大サソリ。 四つ、自由に歩き始めたレイド・アストレア。 五つ、全部を呑み込む黒い影。
どれか一つでも見逃せば、全滅します。
まず魔獣担当は、シャウラとメィリィです。シャウラの技名が出ました。インフィニティッド・ヘルズスナイプ。喪失編で一行を全滅させ続けた、あの白い光と同じ技です。敵に回すと絶望でしたが、味方につくと100連発です。
メィリィの切り札は、砂丘の地下に仕込んでいた巨大ミミズ。喪失編で、スバルの逃亡を一撃で終わらせた、あの個体です。ミミズが暴れて、地下の通路ごと潰れました。地下からの侵入経路も、同時にふさがった形です。ミミズ1体で、二つの仕事です。メィリィを連れてきた選択が、ここで効いています。
64話 エミリアの『名前』
そして64話。ラムが連れ帰った報せです。「銀髪の、知らない人が暴食の大罪司教とぶつかっているわ。」
銀髪の人、ではありません。銀髪の、知らない人。エミリアの名前が奪われました。
暴食の力の、おさらいです。記憶を奪われると本人が忘れ、名前を奪われると周りが忘れる。ユリウスと同じ側に、今度はエミリアが落ちました。そして、スバルだけが覚えている。
ところで、なぜスバルにだけ、権能が効かないのか。スバル自身の仮説は、自分が異世界の出身だから。この世界の、記憶の仕組みの外側にいるから。だとしたら、俺の記憶はこの世界に残るのか。そう考えたスバルは、こう自問します。「それができないから、俺は死に戻りしてるってのか?」
死に戻りの正体に触れる独白です。答えは出ないまま、場面は戦いに戻ります。
ラムは頭痛で、その場にうずくまります。ベアトリスの説明は、欠けすぎている。奪われた相手が絡む記憶が多すぎて、頭の中で齟齬が起きるからです。主従の時間の長さが、そのまま痛みになっています。
一方のエミリアは、名前を奪われた直後なのに、ラムを逃がして、一人で戦い続けていました。駆けつけた仲間への、第一声が、これです。「私のことわからないかもしれないけど、あっちが敵!悪い人!」
それに対する、スバルの返事がこちらです。「もう、絶対に忘れない。たとえ何があっても、俺は君を、忘れないから。」
エミリアの返しも、聞き逃せません。「一番覚えててほしい人は覚えててくれたもの。今、すごーく元気だわ。」
戦いの方は、バテンカイトスの力の見本市でした。エミリアのアイスブランドアーツをコピーして、スバルの記憶から、異世界の剣まで再現する。食べた記憶は、知識としても、技としても使える。
さらに、連携の粗まで突いてきます。「相手を知ってるのと、とりあえず信じるのって、結果的に同じ方向を向けてても全然違うもんでしょ?」
記憶を食う怪物が言うからこそ刺さる、嫌らしい挑発です。
そこへ、降りてこられないはずの男が、降りてきます。レイド・アストレアです。「最高も最強も、最上も最良も、全部オレのためにある言葉なんだからよ。」
65話 一周目の全滅と、死に戻り
65話は、ここから、四つ巴です。
レイドはまず、バテンカイトスを蹴り一発で、壁に叩きつけました。二人がかりでも苦戦した相手が、子ども扱いです。ユリウスの刺突を受け止めたのは、2本の箸でした。
そして、名乗りの場面です。バテンカイトスの、イタダキマス、に対して、レイドはこう返しました。「じゃあ、オレは剣士、<ハウロイラリオル>。」
故郷の隣の家に住んでいた人の、名前だそうです。ふざけた返しに見えます。でも、本名を名乗らなかった。この一言は、頭の片隅に置いておいてください。
戦いの中で、エミリアとユリウスの連携が、噛み合い始めます。ユリウスが、エミリアに合わせたのだと、ベアトリスは分析します。「たぶん、エミリアが合わせる気をなくしたのが正解かしら。」
そしてこの回、一番見逃せないのが、スバルの異変です。胸の熱と一緒に、瞼の裏に、光の粒が見えました。すぐ傍らに一つ。正面に二つ。後ろにまとまって、四つ。離れたところに、一つ。
前回発現した、コル・レオニスの感覚です。光の配置を、仲間と数え合わせてみてください。
そして、もう一つの光が、頭上に。直後、サソリの鋏が、スバルの足を抉りました。仲間の位置を示すような光が、なぜ、サソリにも見えたのか。ここは、答えを言いません。原作でも、この時点では説明されません。
足を負傷して、サソリとレイドとバテンカイトスが、同時に動く。そこへ、塔全体を押し潰す衝撃がきます。「……愛してる。」
喪失編からずっと繰り返されてきた、あの声です。呑まれて、暗転。
そして、戻った先は、緑部屋のベッドではありませんでした。レイドの本から帰還した直後、タイゲタの書庫です。リスタート地点が、前へ動いたことになります。喪失編では緑部屋の目覚めから。今回は、本から戻った直後から。戻る場所が動く。この仕様は、覚えておいて損がありません。
66話 二周目の反撃
ここからは66話。2周目のスバルは、初手から人の配置を変えました。メィリィは、最初からバルコニーへ。ユリウスは、レイドの足止め係。エキドナにレムとパトラッシュを預けて、スバルたちは、ラムと一緒にエミリアのもとへ。
ユリウスを説得するために、スバルは一つ、嘘をつきます。レイドが降りてくることを、暴食から聞いた、と。地の文は、こう書いています。
スバルはエキドナの質問に、堂々と嘘をついて頷いた。(六章66話)
それを見ていた、エキドナの返しが、こちらです。「君が確信を得た方法については、深く尋ねないよ。」
この人工精霊、どこまで見えているんでしょうか。
結果、エミリアの名前は守られました。ラムも、戦線に残れます。
そして決着は、まさかの形でした。背後から、エミリアが忍び寄ります。氷のハンマーが、大罪司教の後頭部に直撃。勝った、と思いきや。倒れた体が、骨格から変わっていきます。「これが日食。まあ、あたしたちの切り札の一枚って感じ?」
名乗りは、魔女教大罪司教、暴食担当、ルイ・アルネブ。3期の終盤、プリステラで、同じ名乗りを聞いています。ライの体を、記憶の回廊にいたはずの妹が、使っている。「お兄ちゃんが寝てる間のつまみ食い」という言い方も、不穏です。お兄ちゃんとは、誰のことなのか。
もう一つ、聞き逃せない一言があります。バテンカイトスがスバルに向けた、この一言です。「いいや、あえてこう言い切ろうか。お兄さんは俺たちの英雄だ!」
……英雄。
喪失編9話、死体の山の前でスバルを呼んだ、あの声と同じ言葉です。なぜ暴食が、スバルを英雄と呼ぶのか。今は、指差すだけにしておきます。
まとめ(原作との違い)
今回の整理です。五つの障害のうち、魔獣は、メィリィとシャウラが抑えました。暴食は進行中。サソリとレイドと影は、これからです。1周目で全滅した盤面を、どう組み替えて崩すのか。次回に続きます。
原作:長月達平『Re:ゼロから始める異世界生活』(小説家になろう/MF文庫J・KADOKAWA)。 本文中の原作の引用は、考察・批評を目的とした引用です。