奪還編の解説
【リゼロ奪還編2話】原作との違いと伏線を全部解説|立ちなさい
第六章61話まで読んだ・見たので、本文を開く 本文をたたむ
今回の範囲
今回、スバルが落ちた白い場所。あそこで交わされた会話が、この章の仕掛けをほとんど全部しゃべっています。
レイドの本を探す
まず、本が見つかるまで。スバルが出した攻略案は、レイドの本を探そう、というものでした。死んだ人間の記録には、どうやって死んだかも書いてある。だったらそれは攻略本になる、という理屈です。
ただ、あの書庫の蔵書は星の数ほどあります。ところが、あっさり見つかります。
見つけたのはメィリィ
見つけたのは、メィリィでした。ここ、実は引っかかるところです。褒められたメィリィは、こう答えます。
ただ、目についた本だったから、たまたま言ってみただけよお。
そのあと、スバルに笑いかけられて、メィリィは、何か言いたげにして、口を噤みます。何を言おうとしたのかは、書かれていません。
昨日まで自分を殺そうとしていた相手に、大手柄だと褒められた直後です。素直に喜べなかっただけなのか、それとも別の理由があったのか。ここは、今の時点では答えが出ません。頭の隅に置いておいてください。
記憶が飛んでも、いちばん被害が小さいのが自分だから。この中で自分がいちばん弱いから。そう言って、みんなの前で本を開きます。
本を開いた先にあったもの
ここからが、今回の中心です。本を開いた瞬間、スバルはレイドの人生を見せられる、はずでした。
死んだ人間の記録を読むというのは、その人物と同化して、その人生を追体験することです。前にメィリィの記録を読んだときは、実際にそうなりました。
ところが、今回は違いました。スバルは、白い場所に立っていました。手があって、足があって、体がある。自分の体のまま、そこにいる。明らかに、レイドの過去ではありませんでした。
そこに、声をかけてくる相手がいます。
あらら。お兄さんったら、またきちゃったの。
また、です。初対面のはずの相手が、再会のような言い方をしました。
そこにいたのは、金色の長い髪の少女でした。スバルは、見たことがない、と思います。ただ、地の文はこう書きます。
改めて見ても、知らない少女。微かに、記憶が疼くような気がしたが。
知らないのに、記憶が疼く。記憶を失っているスバルが、それでも何かを感じ取っている、ということになります。
記憶の回廊
少女は、この場所の名前を口にします。
ここは、寂しく白い、魂の終着地点。オドラグナの揺り籠。記憶の回廊。
ルイ・アルネブ
そして、自分の名前も名乗ります。
あたしたちは、魔女教大罪司教、暴食担当、ルイアルネブ。
魂が濾される場所
ルイはこう言いました。
ここは魂が濾される場所だよ。
使った雑巾を洗って干して、また使う。魂も同じで、こびりついた汚れを落として、綺麗な状態で再利用する。その汚れというのが、記憶や経験のことです。
そして、この場所を管理している存在についても、はっきり言い切ります。
神様なんて大層な代物じゃないよ、あんなもの。ただの仕組みサ。世界を壊されないための仕組みだよ。
この世界の一番底にあるものが、意思を持った神様ではなく、ただの仕組みだと言われました。
「何回目のお兄さんなの?」
そして、ここが重要なところです。ルイは、スバルにこう聞きました。
お兄さんは、あたしたちに食べられてから、なん回目のお兄さんなの。
なん回目、という聞き方です。スバルが死んで戻っていることを、この少女は知っています。
本来、それを口に出すことは許されないはずでした。ですがルイは、平然とこう言います。
記憶の回廊の出来事は簡単には外に漏れない。だから、怖い怖い魔女が動かないの。
この場所では、あの禁止が働かない。スバルにとっては、初めて、あの話を誰かとできる場所だということになります。
そしてスバルは、答えました。
5回目、だ。
記憶を奪った犯人
さらに、ルイは核心に触れます。スバルが、自分の記憶を奪ったのはお前か、と聞いたときです。
そうだよ。
あっさり認めました。スバルの記憶が消えたのは、本を読みすぎたからではなかった。この少女が、食べた。
取り戻せば、今の自分が消える
そして、ルイはスバルに、ひとつの取引を持ちかけます。
記憶が戻ったら、今の自分に上書きされて、その存在は消滅する。これって、死んだのと同じだよね。
記憶を取り戻せば、今のスバルは消える。だから、取り戻さなくていい。今のまま、新しく生きればいい。ルイはそう勧めてきます。
スバルに問い詰められたルイは、こう答えています。
ないよ。ないさ。ないって。それ、慰めになるの。
記憶を戻した人間を見たことがないから、わからない。わからないまま、スバルに選ばせようとしている。
「記憶が人を形作る」
ここで、もうひとつ引っかかるセリフが出ます。ルイが、表情を消して、この一言だけ真剣な声で言いました。
記憶が人を形作るんだよ、お兄さん。
これを聞いたスバルの反応が、地の文に書かれています。
その言葉を聞いたのは初めてではない。あるいは確か、ふたつめの死を迎える直前にも。
記憶をなくしてから、2度目の死のことです。そこで文が途切れます。誰の言葉だったのかは、書かれません。
記憶を失っているはずのスバルが、覚えている言葉。そして、ルイが同じことを言った。それとも、この言葉には出どころがあるのか。ここは、今の時点では答えが出ていません。
整理
整理します。
- ひとつめ。スバルの記憶喪失は、事故ではなく、ルイが食べた結果でした。
- ふたつめ。記憶を取り戻せば今のスバルは消えると、ルイは言っている。ただし証拠はない。
- みっつめ。ルイは、スバルに記憶を取り戻させたくない。
ここで、ひとつ疑問が残ります。ルイは、なぜそこまでして、スバルに記憶を取り戻させたくないのか。
食べたものを返したくないだけなら、こんなに手間をかけて説得する必要はありません。わざわざ本の中に呼び出して、時間をかけて、選ばせようとしている。ここには、理由があるはずです。
「――立ちなさい」
ですが、この選択は最後まで行きませんでした。割れかけたスバルの視界に、誰かが立っています。
どうして、どちらかひとつだけを選ぼうとするんですか。
聞いたことのない声で、そこにいないはずの誰かが言いました。青い髪の少女です。
立ちなさい。
世界で一番厳しい声で、スバルを怒鳴りつけました。
ここで見逃せないのが、ルイの反応です。ルイには、この少女が見えていません。
誰も、誰もいないのに、誰と話してるの、お兄さん。
そして、こう続けます。
ここは、あたしたちの場所。邪魔は入らないはずなのに。
ルイは、そのことに怯えています。なぜ彼女がそこに現れられたのか、原作はこのあとも説明しません。
少女は、立ち上がったスバルにこう言いました。
いって、救ってきて、全てを。
全ては全て。何もかも。全部、全員、自分も、最も身近な他人さえも。
コル・レオニス
そして、最後にこう言います。
スバルくんは、レムの英雄なんです。
全部繋ぎ止めたい、ひとつも取りこぼしたくない、自分すら手放したくない。その臆病な強欲に呼応して、力が開花しました。コル・レオニス。
なぜ引き剥がそうとしたのか
ここでようやく、冒頭の疑問に答えが出ます。立ち上がったスバルに拒まれたルイが、こう漏らしました。
あと一歩で、完全にナツキスバルと、ナツキスバルを引き剥がせたのに。
引き剥がす。記憶を持っていた彼と、今の彼を、別々にすることが目的だったということです。
なぜそんなことをする必要があったのか。理由も、本人が言いました。
同じ人間を2度は食えないからに決まってるでしょ。
ルイは、一度スバルを食べています。だからもう一度は食べられない。ですが、記憶を失った今のスバルが、別人ということになれば。もう一度、食べられる。別人になってもらわないと、食べられないからです。
スバルの記憶喪失は、事故ではなく、そのための仕込みだったことになります。
『死』の経験
では、なぜそこまでしてスバルを食べたいのか。ルイは、他人の人生を食べ尽くして、飽きています。老若男女、あらゆる立場の記憶を食べてきて、ひとつだけ手に入らないものがある。
死の経験だよ。
記憶は生きている間の記録だから、死んだときの記憶は存在しない。お兄さんだけが、例外。スバルが死んで戻る人間だから、狙われている。
塔へ迫るもの
そして、最後にルイが不穏なことを言い残します。自分はここから出られない。だから兄たちに頼んだ、と。
スバルがこの場所にきたのは、これで2回目です。1回目は、記憶を食べられた昨夜でした。
お兄さんがきたの、昨夜から2度目じゃない。だから、お兄ちゃんも兄様も、どっちも気付いてるよ。お兄さんが、どこにいるのか。
居場所が、割れています。ふたつの脅威が、あの塔に向かっている。
今回はここまでです。記憶を奪われた理由が、ようやく形になった回でした。次回、確かめていきましょう。
原作:長月達平『Re:ゼロから始める異世界生活』(小説家になろう/MF文庫J・KADOKAWA)。 本文中の原作の引用は、考察・批評を目的とした引用です。